2018年12月17日月曜日

ベクトルの外積の3重積の公式

《目次》電磁気学のベクトル解析

【3重積の公式の証明(その1)】
「エディントンのイプシロン」(レビチビタ記号とも呼ばれる)を使って3次元ベクトルの外積を定義し、その3次元ベクトルの外積の3重積を計算することで、3重積の公式を楽に導出して思い出せるようになります。

3次元ベクトルAとベクトルBの外積でベクトルHを計算する式は、エディントンのイプシロンを使って:
εmpr=h
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
と表して覚えた方が覚えやすいです。

また、3次元ベクトルAとBの内積は、クロネッカーのデルタ
δst
を使って以下のように表すことができます。

ここで、以下の、3次元ベクトルAとBとCの外積の3重積を計算します。
この式の計算は、エディントンのイプシロンを使って、アインシュタインの縮約表記で以下のようにあらわすことができます。
この式で出て来た、3次元ベクトルに関する2重のエディントンのイプシロンは、以下の様に展開できます。
先ず、値が0にならない場合を先に列記します。

以上の式以外の添え字を持つテンソルγstijの値は全て0になります。
そのため、2重のエディントンのイプシロンを表すテンソルγstijは、クロネッカーのデルタδの積の差の以下の式と等価です。
この等価な公式を覚えましょう。
この公式を使うと、以下の様に計算を進めることができます。
(証明おわり)

この、3次元ベクトルの外積の3重積の展開公式は、
以上の、3次元ベクトルに関する2重のエディントンのイプシロンの、クロネッカーのデルタの積の差への変換公式を使って、速やかに導き出す様に覚えましょう。

【3重積の公式の証明(その2)】
(公式の検算)
 3次元ベクトルの外積の3重積の展開公式は以下の図を書いて検算できます。
(検算おわり)

(公式の証明開始)
(1)
上の検算の結果:
ベクトルAがX方向のベクトルであり、
ベクトルBがY方向のベクトルである場合に、
ベクトルCがX方向のベクトルであってもY方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

ベクトルCがZ方向のベクトルの場合も、結果が0になるので、公式が成り立つ。

よって、
ベクトルAがX方向のベクトルであり、ベクトルBがY方向のベクトルである場合は、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(2)
ベクトルAがY方向のベクトルであり、ベクトルBがZ方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。
(3)
ベクトルAがZ方向のベクトルであり、ベクトルBがX方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(4)
以上の(1)から(3)の、ベクトルAとベクトルBを入れ替えた場合にも公式が成り立つ。
すなわち、(3)の場合のベクトルAとベクトルBを入れ替えた場合:
ベクトルAがX方向のベクトルであり、ベクトルBがZ方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(5)ベクトルAがX方向のベクトルであれば、
ベクトルBがX方向の場合も、結果が0になるので、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。
(6)
以上の(1)と(4)と(5)より、
ベクトルAがX方向のベクトルであれば、
ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、公式が成り立つ。

(7)
以上の(6)と同様にして、
ベクトルAがY方向のベクトルの場合もZ方向の場合も、
ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、公式が成り立つ。

(8)
以上の(6)と(7)により、
ベクトルAがどの方向のベクトルであっても、
そして、ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、
そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、
公式が成り立つ。

(証明(その2)おわり)

【3重積の公式の証明(その3)】
3重積の公式は以下の様に直交ベクトル系a,h,avを定義して計算して求めることもできます。



先ず、3重積の公式の左辺を計算します。

次に、3重積の公式の右辺を計算します。

式9と式10の値が一致するので、以下の式の3重積の公式が成り立つ。

(証明(その3)おわり)
 
 ベクトルの外積の三重積の公式は、ベクトルCを、ベクトルAとBの張る平面に射影して、その射影したベクトルを、その平面内で90°回転させたベクトルの表現の公式です。 
 
 【3重積の公式の証明(その4)】
その3の証明とほとんど同じ証明ですが、以下の形の計算を行って証明することができます。
(1)ベクトルAの方向の単位ベクトルをベクトルXとする。
(2)ベクトルAとベクトルBの張る平面上のベクトルで、ベクトルAに垂直な単位ベクトルをベクトルYとする。
(3)ベクトルXとベクトルYの外積をベクトルZとする。ベクトルZは単位ベクトルになる。
直交ベクトル系、X,Y,Zで、ベクトルA,B,C、が以下の図のように表せる。

このとき、以下の式1が成り立つ。

また、以下の式2が成り立つ。

式1のベクトルと式2のベクトルが等しいので式3の関係が成り立つ。

(証明(その4)おわり)

【ベクトルの外積同士の内積の公式】
また、以下の公式も成り立ちます。
《証明(その1)開始》
(証明(その1)おわり)
 
《ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その2)》
上の公式は、三重積の公式を使って以下の様に証明することもできます。

(証明(その2)おわり)

《証明(その3)》
上の公式は、ここをクリックした先のサイトの証明のように、段階的に証明を進めて証明することもできます。

《証明(その4)》
また、上の公式は、ベクトルhを用いて以下の様に計算して証明することもできます。


下図のように、ベクトルAとベクトルBの外積を単位ベクトルhを使って表し、直交ベクトル系hとaとavを定義する。


そして、公式の左辺の式を、以下の様にベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルaとベクトルavであらわして計算する。


次に、公式の右辺の式を、ベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルAとベクトルBであらわして計算する。

   式11と式12の値が等しいので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その4)おわり)

《応用例》
 この公式を応用すると、以下の定理が成り立つ。


2018年12月12日水曜日

電場と磁場をバランスさせる

「高校物理の発想の基本」
以下の図のような場合に、運動する電荷に対して、電場と磁場の力をバランスさせて力を打ち消すことができます。
 以下の図で、磁場は紙面の裏側に向けて紙面に垂直にかかっているものとします。

この場合に、この電荷と同じ速度で運動する座標系でこの電荷を見たら、以下の図のように見えます。
(磁場Hが運動すると誘導電場Eが生じる現象は、「電磁場のローレンツ変換」の公式であらわされます。この公式の理論は大学の2年生以上にならないと学ばないようです。)
 電荷が静止して見える座標系では、運動する磁場が発生する電場がもともとあった電場を打ち消す結果、合計した電場が0になります。
 その結果、上下の金属板間の電圧も0になります。電圧は、運動座標系が異なれば異なって見えます。

【蛇足】
 なお、もともとあった電場も運動することで発生する新たな磁場ΔHの大きさを計算すると、相対性理論による磁場Hの大きさの誤差程度の磁場ΔHの値になります。
 誤差範囲内の値なので、この値が元の磁場Hに加わるかどうかは、何とも言えません。正確な事実を知りたい人は、大学でアインシュタインの相対性理論の電磁場への適用を勉強して下さい。
(磁場Hが運動すると誘導電場Eが生じる現象は、「電磁場のローレンツ変換」の公式であらわされます。この公式の理論は大学の2年生以上にならないと学ばないようです。)


【リンク】
「高校物理の目次」