2018年12月17日月曜日

ベクトルの外積の3重積の公式

《目次》電磁気学のベクトル解析

【3重積の公式の証明(その1)】
「エディントンのイプシロン」(レビチビタ記号とも呼ばれる)を使って3次元ベクトルの外積を定義し、その3次元ベクトルの外積の3重積を計算することで、3重積の公式を楽に導出して思い出せるようになります。

3次元ベクトルAとベクトルBの外積でベクトルHを計算する式は、エディントンのイプシロンを使って:
εmpr=h
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
と表して覚えた方が覚えやすいです。

また、3次元ベクトルAとBの内積は、クロネッカーのデルタ
δst
を使って以下のように表すことができます。

ここで、以下の、3次元ベクトルAとBとCの外積の3重積を計算します。
この式の計算は、エディントンのイプシロンを使って、アインシュタインの縮約表記で以下のようにあらわすことができます。
この式で出て来た、3次元ベクトルに関する2重のエディントンのイプシロンは、以下の様に展開できます。
先ず、値が0にならない場合を先に列記します。

以上の式以外の添え字を持つテンソルγstijの値は全て0になります。
そのため、2重のエディントンのイプシロンを表すテンソルγstijは、クロネッカーのデルタδの積の差の以下の式と等価です。
この等価な公式を覚えましょう。
この公式を使うと、以下の様に計算を進めることができます。
(証明おわり)

この、3次元ベクトルの外積の3重積の展開公式は、
以上の、3次元ベクトルに関する2重のエディントンのイプシロンの、クロネッカーのデルタの積の差への変換公式を使って、速やかに導き出す様に覚えましょう。

【3重積の公式の証明(その2)】
(公式の検算)
 3次元ベクトルの外積の3重積の展開公式は以下の図を書いて検算できます。
(検算おわり)

(公式の証明開始)
(1)
上の検算の結果:
ベクトルAがX方向のベクトルであり、
ベクトルBがY方向のベクトルである場合に、
ベクトルCがX方向のベクトルであってもY方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

ベクトルCがZ方向のベクトルの場合も、結果が0になるので、公式が成り立つ。

よって、
ベクトルAがX方向のベクトルであり、ベクトルBがY方向のベクトルである場合は、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(2)
ベクトルAがY方向のベクトルであり、ベクトルBがZ方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。
(3)
ベクトルAがZ方向のベクトルであり、ベクトルBがX方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(4)
以上の(1)から(3)の、ベクトルAとベクトルBを入れ替えた場合にも公式が成り立つ。
すなわち、(3)の場合のベクトルAとベクトルBを入れ替えた場合:
ベクトルAがX方向のベクトルであり、ベクトルBがZ方向のベクトルである場合も、同様にして、
ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。

(5)ベクトルAがX方向のベクトルであれば、
ベクトルBがX方向の場合も、結果が0になるので、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても公式が成り立つ。
(6)
以上の(1)と(4)と(5)より、
ベクトルAがX方向のベクトルであれば、
ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、公式が成り立つ。

(7)
以上の(6)と同様にして、
ベクトルAがY方向のベクトルの場合もZ方向の場合も、
ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、公式が成り立つ。

(8)
以上の(6)と(7)により、
ベクトルAがどの方向のベクトルであっても、
そして、ベクトルBがどの方向のベクトルであっても、
そして、ベクトルCがどの方向のベクトルであっても、
公式が成り立つ。

(証明(その2)おわり)

【3重積の公式の証明(その3)】
3重積の公式は以下の様に直交ベクトル系a,h,avを定義して計算して求めることもできます。



先ず、3重積の公式の左辺を計算します。

次に、3重積の公式の右辺を計算します。

式9と式10の値が一致するので、以下の式の3重積の公式が成り立つ。

(証明(その3)おわり)
 
 ベクトルの外積の三重積の公式は、ベクトルCを、ベクトルAとBの張る平面に射影して、その射影したベクトルを、その平面内で90°回転させたベクトルの表現の公式です。 
 
 【3重積の公式の証明(その4)】
その3の証明とほとんど同じ証明ですが、以下の形の計算を行って証明することができます。
(1)ベクトルAの方向の単位ベクトルをベクトルXとする。
(2)ベクトルAとベクトルBの張る平面上のベクトルで、ベクトルAに垂直な単位ベクトルをベクトルYとする。
(3)ベクトルXとベクトルYの外積をベクトルZとする。ベクトルZは単位ベクトルになる。
直交ベクトル系、X,Y,Zで、ベクトルA,B,C、が以下の図のように表せる。

このとき、以下の式1が成り立つ。

また、以下の式2が成り立つ。

式1のベクトルと式2のベクトルが等しいので式3の関係が成り立つ。

(証明(その4)おわり)

【ベクトルの外積同士の内積の公式】
また、以下の公式も成り立ちます。
《証明(その1)開始》
(証明(その1)おわり)
 
《ベクトルの外積同士の内積の公式の証明(その2)》
上の公式は、三重積の公式を使って以下の様に証明することもできます。

(証明(その2)おわり)

《証明(その3)》
上の公式は、ここをクリックした先のサイトの証明のように、段階的に証明を進めて証明することもできます。

《証明(その4)》
また、上の公式は、ベクトルhを用いて以下の様に計算して証明することもできます。


下図のように、ベクトルAとベクトルBの外積を単位ベクトルhを使って表し、直交ベクトル系hとaとavを定義する。


そして、公式の左辺の式を、以下の様にベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルaとベクトルavであらわして計算する。


次に、公式の右辺の式を、ベクトルCとベクトルDをベクトルhとベクトルAとベクトルBであらわして計算する。

   式11と式12の値が等しいので、以下の式が成り立つ。

(公式の証明(その4)おわり)

《応用例》
 この公式を応用すると、以下の定理が成り立つ。


2018年12月12日水曜日

電場と磁場をバランスさせる

「高校物理の発想の基本」
以下の図のような場合に、運動する電荷に対して、電場と磁場の力をバランスさせて力を打ち消すことができます。
 以下の図で、磁場は紙面の裏側に向けて紙面に垂直にかかっているものとします。

この場合に、この電荷と同じ速度で運動する座標系でこの電荷を見たら、以下の図のように見えます。
(磁場Hが運動すると誘導電場Eが生じる現象は、「電磁場のローレンツ変換」の公式であらわされます。この公式の理論は大学の2年生以上にならないと学ばないようです。)
 電荷が静止して見える座標系では、運動する磁場が発生する電場がもともとあった電場を打ち消す結果、合計した電場が0になります。
 その結果、上下の金属板間の電圧も0になります。電圧は、運動座標系が異なれば異なって見えます。

【蛇足】
 なお、もともとあった電場も運動することで発生する新たな磁場ΔHの大きさを計算すると、相対性理論による磁場Hの大きさの誤差程度の磁場ΔHの値になります。
 誤差範囲内の値なので、この値が元の磁場Hに加わるかどうかは、何とも言えません。正確な事実を知りたい人は、大学でアインシュタインの相対性理論の電磁場への適用を勉強して下さい。
(磁場Hが運動すると誘導電場Eが生じる現象は、「電磁場のローレンツ変換」の公式であらわされます。この公式の理論は大学の2年生以上にならないと学ばないようです。)


【リンク】
「高校物理の目次」

2018年11月29日木曜日

エディントンのイプシロンと行列式とベクトルの外積

「電磁気学のベクトル解析」の目次はここをクリック

「エディントンのイプシロン」(レビチビタ記号とも呼ばれる)を使って行列式が計算できます。
また、「エディントンのイプシロン」を使ってベクトルの外積を定義することで、ベクトルの外積の計算が楽になります。

【行列式】
行列式により、ベクトルが張る平行四辺形の面積や、斜方体の体積が計算できます。

「行列式」は、行の数と列の数が同じ正方行列の場合に計算できるものです。

(2行2列の行列の行列式)
2行2列の行列の行列式は、
その行列の要素が構成する2つの縦ベクトルが作る平行四辺形の面積をあらわすという意味を持ちます。
上図の式が行列式の記号です。

2行2列の行列Astの行列式は、
エディントンの行列式の計算記号εmpを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
εmpm1p2=Σ(m=1,2;p=1,2){εmpm1p2
(左辺の様な式を書いた場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
で計算します。
この計算に利用する行列εmpは、
m≠pの場合の、
ε12=1,
ε21=-1
であり、
それ以外の、m=pとなる場合の、
εmp=ε11ε22=0
です。

エディントンの計算記号εmpを定める規則は単純であり、
(1) εmpの添え字の値が等しければ、その値が0であり、すなわち、0=ε11=ε22であり、
(2) また、
ε12=1であり、
(3) εmpの任意の2つの添え字を入れ替えると、その値の正負の符号が変わる、すなわち、-1=ε21である。
これは、εmpがεmprになっても同じ規則が成り立ちます。

行列式
εmpm1p2
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
 は、
ベクトルA:
(a,a)=(A11,A21)と、
ベクトルB:
(b,b)=(A12,A22

の作る平行四辺形の面積をあらわすという意味を持ちます。
εmpm1p2=εmp
となる右辺の式であらわした方が分かり易いかもしれません。


行列式を具体的に計算すると、
εmpm1p2=A1122-A2112=a-a
です。
 なお、行列式の計算方法は、行と列を入れ替えても変わらない、行と列に関して対称な式になっています。
すなわち、行列式は、以下の式でも計算できます。
εmp1m2p
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)

(行列式は平行四辺形の面積)
 以下で、行列式がベクトルの作る平行四辺形の面積を計算するものであることを説明します。
 

【第1の証明】
一言で言うと、行列式の計算式を見ると、
1列目のベクトルに垂直で長さが同じベクトルと、2列目のベクトルとの内積の計算であることがわかります。
ベクトルHを以下の式で定義してみます。
εmp=h
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
上の式でベクトルHを定義すると、
ベクトルHはベクトル(-a,a)になります。

そのベクトルHの長さは、ベクトルAと同じです。
ベクトルHとベクトルAの内積を以下で計算します。
すると、その内積は:
=εmp=a-a=0
になり、0になります。

ベクトルHとベクトルAの内積が0になるので、ベクトルH、すなわち、hはベクトルAに垂直なベクトルであることがわかります。

また、h=εmp
 
(この様に書く場合は、通常は、アインシュタインの縮約記法による積の和を表しています)
となり、ベクトルHとベクトルBの内積が行列式をあらわします。
ベクトルAに垂直でベクトルAと同じ長さのベクトルHとベクトルBの内積は、 ベクトルAとベクトルBを斜辺とする平行四辺形OADBの面積ですので、行列式εmpの値は、その平行四辺形OADBの面積です。
(証明おわり)

 これで証明ができましたが、以下の様な見方で考えるのも面白いと思うので読んでください。

(平行四辺形の面積の計算)
 以下で、平行四辺形の面積を要素に分解して計算し、その要素を合計して平行四辺形の面積を計算します。
 以下のように、座標系が回転しても結果が変わらないように面積の計算規則を定める点がポイントです。
(注意)以下の式の「×」記号は、ベクトルの外積とは異なる独自の計算ルールを表す記号です。
 X座標軸を反時計まわりに90°回転させてY座標軸に重ねると、Y座標軸は反時計まわりに90°回転してX座標軸の負の方向を向いて重なる。そのため、XベクトルとYベクトルの張る(ベクトルの順と成す角の向きを考えた)平行四辺形の面積を正にした場合、このように座標を回転させても面積が変わらないようにするには、必然的に、ベクトルの順と成す角の向きを考えた、Yベクトルと、X方向の負の方向を向いたベクトルの張る平行四辺形の面積を正にする必要がある。それは、YベクトルとX方向の正の方向を向いたベクトルの張る平行四辺形の面積を負にしなければならない事を意味する。

 下図の様に、ベクトルAとBが平行な場合にベクトルAとBが張るつぶれた平行四辺形の面積は0である。
その平行四辺形の面積を、ベクトルAとBをそれぞれ、X方向のベクトルとY方向のベクトルの和で表し、その和のベクトルAとBの積を、X方向のベクトルとY方向のベクトルの積の和に展開して、以上で定めた計算規則に従って計算すると、その計算結果も0になる。
また、同じ方向を向くベクトルAとBが張るつぶれた平行四辺形は、その平行四辺形を回転させてどの方向を向かせても、同じ0の値の面積が計算できる。
 平行四辺形を張るベクトルA及びBをX方向のベクトルとY方向のベクトルに分解すると、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る平行四辺形が4個できる。その4個のうち2つの平行四辺形は、同じ方向のベクトルの張るつぶれた平行四辺形であり、その面積が0なので無視できる。
そして、その4個の平行四辺形の面積の和で、ベクトルAとBの張る平行四辺形の面積を計算したい。
上の例では、少なくとも面積が0のつぶれた平行四辺形の面積の計算では、その0の面積が、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る4個の平行四辺形の和と同じになる演算ができる様になった。

 次に、下図のように、ベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形の面積を、同じ面積を維持するように高さを保たせて変形した平行四辺形にして面積を求める手法を、ベクトルAを分解したベクトルとベクトルBとの積の和を計算する手法に対応させて面積を計算する。
 上図の、平行四辺形の変形と分解操作に対応するベクトルの積の式の分解操作の計算が以下の式であらわせる。
 
式0の様に、ベクトルAとベクトルBの(順番を考えた)積はそのベクトルAを分解した各ベクトルとベクトルBの張る各平行四辺形の面積の和に対応付けられる。

すなわち:
(ベクトルAのベクトルBに対する垂直成分の長さ)×(ベクトルBの長さ)
が平行四辺形の面積を表す。
一方、ベクトルAを分解して、
ベクトルA=ベクトルA1+ベクトルA2
とすると:
ベクトルA1のベクトルBに対する垂直成分の長さと、
ベクトルA2のベクトルBに対する垂直成分の長さの和は、
ベクトルAのベクトルBに対する垂直成分の長さに等しい。
そのため、
ベクトルAとベクトルBが張る平行四辺形の面積
=(ベクトルA1とベクトルBが張る平行四辺形の面積)
+(ベクトルA2とベクトルBが張る平行四辺形の面積)
の関係が成り立つ。
その関係は、
ベクトルA×ベクトルB
=(ベクトルA1×ベクトル B)
+(ベクトルA2×ベクトルB)
に分解した式で表すことができる。

すなわち、ベクトルが張る平行四辺形の面積についての分配法則に対応して、ベクトルの加法と(ベクトルの順番を考えた)乗法についての分配法則が共に成り立っている。

 また、上図の様に、ベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形を、
その平行四辺形を構成する2番目のベクトルBを、ベクトルAのk倍のベクトルを加えて、ベクトルAに対する高さを保たせて歪めたベクトルB2に変える。
そうして、ベクトルAとベクトルB2の張る平行四辺形を考える。
その場合、以下の式が成り立つ。
ベクトルの加法と乗法についての分配法則により、
ベクトルA×ベクトルB2
=(ベクトルA×ベクトルB)
+(ベクトルA×k(ベクトルA))
と表すことができる。

ここで、
(ベクトルA×k(ベクトルA))
は面積が0のつぶれた平行四辺形をあらわしているので、その面積は0である。

それゆえ、
ベクトルA×ベクトルB2=ベクトルA×ベクトルB
が成り立つ。
この式は、底辺の長さが同じで高さが等しい平行四辺形の面積が等しい事実と一致している。
この様に、平行四辺形の面積を表すベクトルの加法と乗法の分配法則が、変形した平行四辺形の面積の法則と一致して、成り立っている。

 以上の演算規則で定めた、X座標方向の単位ベクトルとY座標方向の単位ベクトルが作る平行四辺形の面積の符号に合わせて、エディントンの計算記号εmpを定める。
それにより、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る4個の平行四辺形の面積は、
εmp
で表せる。
その4個の面積要素の和を行列式と定義する。

エディントンの計算記号εmpは、以上で定めたX方向のベクトルとY方向のベクトルの積の値の正負の演算規則に合わせることで:
m=pとなる場合に、
εmp=ε11=ε22=0
にし、
m≠pの場合に、
ε12=1,
にし、
その添え字の順を入れ替えると符号が変わる、
ε21=-1
に定める。
その様にエディントンの計算記号εmpを定める。

その様に正負を定めた4つの平行四辺形の面積εmpの和をアインシュタインに縮約記法によって、
 εmp=Σ(m=1,2;p=1,2){εmp
 とあらわして、
ベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形の面積を計算し、その値を行列式の値にする。
 その様にエディントンの計算記号εmpを定め、行列式の演算をεmpを使って定める事で、その行列式が、元のベクトルが張る平行四辺形の面積になる。

(平行四辺形の面積を1つ目のベクトルに垂直なベクトルと2つ目のベクトルの内積であらわす)
 先に簡単に説明した事だが、念のため、以下で、このことを詳しく説明する。
 三角形の面積Sは、以下の様に、ベクトルAに垂直なベクトルH=AとベクトルBの内積であらわすことができる。
(式1’が平行四辺形の面積2Sの公式)
こうして得た式1’は、先に計算した行列式による面積の計算式1aと同じ式になった。
 すなわち、2行2列の行列式は、ベクトルAに垂直なベクトルH=AとベクトルBの内積であらわすことができる。
 行列式はベクトルが張る平行四辺形の面積を表すが、その平行四辺形の面積は、ベクトルAに垂直なベクトルAとベクトルBの内積でもあらわすことができる。そのため、行列式の計算を、ベクトルAに垂直なベクトルAとベクトルBの内積の計算を表しているものと解釈して、行列式の計算から、ベクトルAに垂直なベクトルAを導き出すことができる。

ベクトルBが、(b,b)であるとき、
行列式の値が、-b+bです。

ベクトルBとの内積がこの行列式の値になるベクトル(-a,a)を調べる。
このベクトルは、εmpとあらわしたベクトルH=であり、アインシュタインの縮約記法で:
εmp=Σ(m=1,2){εmp
となります。
このベクトル(-a,a)とベクトルA(a,a)の内積=0なので、
ベクトル(-a,a)は、ベクトルAに垂直であり、ベクトルAに平行である。
しかも、ベクトル(-a,a)とベクトルBの内積が行列式の値と同じなので、
ベクトル(-a,a)=ベクトルAである。 

(注意)
εmp=Σ(m=1,2){εmp
ですが、
εmp=Σ(p=1,2){εmp}=-
になります。 

(3行3列の行列式)
3行3列の行列の行列式は、その行列の要素が構成する3つのベクトルAとBとCが作る斜方体の体積Vをあらわすという意味を持つ。
 また、3つの3次元ベクトルの先端と原点とを頂点とする三角錐の体積は、その3つの3次元ベクトルを3つの列ベクトルとする行列式の値を6分の1にした値になる。
3行3列の行列Astの行列式は、
エディントンの行列式の計算記号εmprを使って、アインシュタインの縮約記法であらわして、
εmprm1p2r3
で計算できる。

この計算に利用する行列εmprは、テンソルと呼ばれる。
(特に、物理学では、空間の位置座標をあらわすベクトル等の具体的な物理量を表すベクトルや、そのベクトルを変換する行列に、物理的意味を付けて呼ぶ。テンソルも、物理的意味の違いにより、テンソルか、擬テンソルと呼ばれる)
XYZ座標系での物理的長さを持つベクトルの張る斜方体の体積をあらわす行列式を計算するテンソルεmprは、擬テンソルと呼ばれる。

エディントンの計算記号εmprを定める規則は単純であり、
(1) εmprの添え字の値のどれかが等しければ、その値が0であり、
(2) また、
ε123=1であり、
(3) εmprの任意の2つの添え字を入れ替えると、その値な正負の符号が変わる。
という規則に従って、全てのεmprの値が定まる。
すなわち εmprは、m=p or m=r or p=rの場合に、
εmpr=0
であり、
m≠p、m≠r、p≠rの場合に、
ε123=ε231=ε312=1
であり、
上の要素の座標の添え字を入れ替えた場合の、
ε213=ε321=ε132=-1
という様に値を負にする。

なお、以下の様に添え字を入れ替えていくと、
ε231=ーε213=ε123=1
と変換して値が求められる。

行列式
εmprm1p2r3
は、
ベクトルA:
(a,a,a)=(A11,A21,A31)と、
ベクトルB:
(b,b,b)=(A12,A22,A32)と、
ベクトルC:
(c,c,c)=(A13,A23,A33

の作る斜方体の体積をあらわすという意味を持つ。

行列式を具体的に計算すると、
εmprm1p2r3
=A112233
+A213213
+A311223
-A211233
-A312213
-A113223
である。

(斜方体の体積Vの計算)
以下で、斜方体の体積Vを要素に分解して計算し、その要素を合計して斜方体の体積Vを計算する。

 以下のように、座標系が回転しても結果が変わらないように体積の計算規則を定める点がポイントです。
(注意)以下の式の「×」記号は、ベクトルの外積とは異なる独自の計算ルールを表す記号です。
 以上の演算規則を定めることで、下図の様に、ベクトルAとBが平行な場合にベクトルAとBが張るつぶれた平行四辺形とベクトルCが張る体積0のつぶれた斜方体の体積を、下の式の様に、ベクトルを要素に分解した各要素ベクトルの体積の和で計算できる様になった。
 上図の斜方体の体積を、ベクトルAとBをそれぞれ、以下の式で、X方向のベクトルとY方向のベクトルとZ方向のベクトルの和で表し、その和のベクトルAとBとベクトルCの積を、X方向のベクトルとY方向のベクトルとZ方向のベクトルの積の和に展開して計算すると、その計算結果も0になる。
上の計算により、同じ方向を向くベクトルAとBが張るつぶれた平行四辺形とベクトルCが張るつぶれた斜方体は、その斜方体を回転させてどの方向を向かせても、同じ0の値の体積に計算できる事が示された。

 また、以下の計算により、体積が1の、ベクトルXとYとZの張る斜方体に、体積0の潰れた斜方体を加えていくと、ベクトル(-Y)とベクトルXとベクトルZの斜方体に変換できる。
 これは、元の体積1の斜方体をZ軸のまわりに回転させた斜方体である。

 また、例えば、以下の式の様に、ベクトルAとBとCが張る斜方体の体積を表す式に、ベクトルAとBと、ベクトルAのs倍とベクトルBのt倍の和のベクトルとが張る、体積が0のつぶれた斜方体の体積を表す式を加える。
式を整理すると、元の斜方体を張るベクトルCが、ベクトルAとBの張る平面に対する高さを維持して傾けたベクトルC’に変換され、ベクトルAとBとC’の張る斜方体の体積を表す式に変換される
そして、そのように歪めた斜方体の体積は元の斜方体の体積と同じであるが、計算結果も同じ体積が計算できる様になった。

 また、X方向のベクトルとY方向のベクトルの加法と乗法について分配法則が成り立つ。X方向のベクトルとZ方向のベクトルについても同様に分配法則が成り立ち、Y方向のベクトルとZ方向のベクトルについても同様に分配法則が成り立つ。その結果、全方向のベクトルの加法と乗法について分配法則が成り立つ。
 ベクトルAとBとCが張る斜方体のベクトルCを2つのベクトルC1とC2の和に分解すると、
ベクトルAとBとCの張る斜方体の体積をVとし、
ベクトルAとBとC1が張る斜方体の体積をV1とし、
ベクトルAとBとC2が張る斜方体の体積をV2とすると、
ベクトルが張る斜方体の体積の間に
V=V1+V2
という関係が成り立つ。
一方で、
ベクトルA×ベクトルB×ベクトルC
ベクトルA×ベクトルB×ベクトルC1
 +ベクトルA×ベクトルB×ベクトルC2 
というベクトルの加法と乗法についての分配法則が成り立つ。

 斜方体として、
ベクトルA:
(a,a,a)=(A11,A21,A31)と、
ベクトルB:
(b,b,b)=(A12,A22,A32)と、
ベクトルC:
(c,c,c)=(A13,A23,A33)と、
の3つのベクトルが張る斜方体を考える。

 この斜方体を張るベクトルAとBとCをX方向のベクトルとY方向のベクトルとZ方向のベクトルに分解すると、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルとベクトルCの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る斜方体が27個できる。そのうち21個の斜方体は、少なくも2つのベクトルが同じ方向を向いた3つのベクトルで張られるつぶれた斜方体であり、その体積が0であるため無視できる。その27個の斜方体の体積の和が、ベクトルAとBとCの張る斜方体の体積と同じになる演算ができる様になった。

 そして、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルとベクトルCの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る27個の斜方体の体積に係る、X方向の単位ベクトルとY方向の単位ベクトルとZ方向の単位ベクトルを組み合わせた積の符号を、エディントンの計算記号εmprを用いて定める。
この式でεmprを定義することで、
(1) εmprの添え字の値のどれかが等しければ、その値が0であり、
(2) また、
ε123=1であり、
(3) εmprの任意の2つの添え字を入れ替えると、その値な正負の符号が変わる。
という規則が成り立つ。
その規則に従うεmprを使うことで、ベクトルAの分解されたベクトルとベクトルBの分解されたベクトルとベクトルCの分解されたベクトルの積の組み合わせが作る27個の斜方体の各々の体積は、
εmpr
で表せる(ここでは例外的にアインシュタインの縮約記法の積の和を使わず、1つの積のみを表す)。
その27個の体積要素の和を行列式と定義し、アインシュタインの縮約記法で、
εmpr
と表す。

 以上で、斜方体の体積Vを27個の体積要素に分解して計算し、その体積要素を合計して斜方体の体積Vが得られた。
 そして、個々の単位ベクトルが張る斜方体の体積の和が、ベクトルAとBとCが張る斜方体の体積Vになるように、個々の斜方体の体積Vの正負を定める規則が、エディントンの行列式の計算記号εmprに反映されて定められている。
 そのように、3階のエディントンの計算記号εmprを定める事で、3個のベクトルAとBとCが張る3次元の斜方体の体積Vが、各ベクトルを複数のベクトルに分解した場合の各ベクトルの張る複数の3次元の斜方体の体積の和になる。
 すなわち、ベクトルの基本要素の3つの積で表される体積要素の3×3×3=27組の各体積要素の符号をエディントンの計算記号εmprを用いて定め、その27=3個の体積要素の和を、行列式にする。

 こうして、エディントンの行列式の計算記号εmprを用いて表す、εmprによる計算を、3×3の行列式の計算規則とする。
その様に行列式を、εmprで計算する事に定める事で、その行列式が元のベクトルが張る斜方体の体積Vを計算する式になる。

(面に垂直なベクトルと残りのベクトルの内積で体積を求める)
この斜方体の体積Vは、ベクトルAとBに垂直で、大きさがベクトルAとBの張る平行四辺形の面積に等しいベクトルHとベクトルCの内積であらわすことができる。

 そのために、
行列式の計算を、ベクトルHとベクトルCの内積の計算を表しているものと解釈して、
行列式の計算から、以下の様にしてベクトルHを導き出すことができる。

εmpr=hと表す。
ベクトルhとベクトルAとの内積=εmpr=0であり、
(同じベクトルが並ぶ行列式の値は0であるため)
ベクトルhとベクトルBとの内積=εmpr=0です。
(同じベクトルが並ぶ行列式の値は0であるため)
そのため、
ベクトルhはベクトルAとBに垂直である。

(補足)
同じベクトルが並ぶ行列式の値が0になることは、εmprを用いて以下の様に証明できる。
【証明開始】
εmpr=-εrpmであるので、
εmpr=-εrpm
=-εrpm=-εmpr
∴ 2εmpr=0 ,
εmpr=0 ,
(証明おわり)

また、

ベクトルCが、(c,c,c)であり、
行列式の値=εmpr
であり、
行列式が表す斜方体の体積Vがベクトルhとベクトルcの内積の値に等しいので、
ベクトルhの大きさは、ベクトルAとBの張る平行四辺形の面積に等しい。

以上の結果から、 εmpr=hは、
ベクトルAとBに垂直で、大きさがベクトルAとBの張る平行四辺形の面積に等しいベクトルHです
ベクトルAとBに垂直なベクトルHを計算する上の式は、
ベクトルの外積の計算式:
ベクトルA×ベクトルB=ベクトルH
を表している。
ベクトルの外積の計算式は、上の式

εmpr=h
で覚えた方が覚えやすいです。
(念のため補足:この式はアインシュタインの縮約記法で表した積の和)

 このように、エディントンの行列式の計算記号εmpを用いて表す行列式は、行列を構成するベクトルが作る面積や体積をあらわします。


(n行n列の行列式)
ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn){A(p1)1(p2)2(p3)3・・・A(pn)n
でn行n列の行列式を計算する。
このエディントンの計算記号の集合は、添え字が2つのものは行列と呼び、添え字が3つ以上のものと行列とは合わせてテンソルと呼ぶ。
このエディントンの計算記号ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn)は、n個の要素を持つが、
その各要素は、以下の値を持つ。
添え字のうちの少なくとも2つが同じ添え字になる場合、
ε(p1)(p2)(p3)・・・(pn) =0
であり、
ε(1)(2)(3)・・・(n)=1
であり、この添え字の位置を交換すると(-1)倍になる。例えば、1と2を交換すると、
ε(2)(1)(3)・・・(n)=-1
になる。

(備考)
ε1,2,3,4=1ですが、
ε2,1,3,4=ー1 ,
ε2,3,1,4=1 ,
ε2,3,4,1=ー1 ,
になり、添え字を1つづつずらして循環したら符号が変わります。
しかし、添え字の数を奇数にすれば、
1=ε1,2,3,4,5=ε2,3,4,5,1
のように、添え字を1つづつずらして循環したら符号が同じになります。


 その様にn階のエディントンの計算記号εmp・・・を定める事で、n個のベクトルが張るn次元の斜方体の体積が、そのベクトルを複数のベクトルに分解した場合の各ベクトルの張る複数のn次元の斜方体の体積の和になる。
 そして、斜方体を張るn個のベクトルをn次元の各座標軸方向のn個の要素のベクトルに分解して、n個の要素のベクトルをn組掛け合わせて体積を求める。
そのn個の各要素の符号をエディントンの計算記号εmp・・・を用いて定め、そのn個の体積要素の和を、行列式にする。その様に行列式を定める事で、その行列式が、元のベクトルが張るn次元の斜方体の体積をあらわす。

【行列式は行と列を入れ替えても結果が同じ】
行列式は、計算の元になる行列の行と列に関して対称な計算式です。そのため、行と列を入れ替えた行列でも行列式は同じ値になります。